LMC・BO体験レポート

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レポート

種別BO or LMCBO
環境日時2008年9月20日 11時00分ごろ
場所海洋(水深50mのポイント)
水流若干あり
水深問題となったのは海面
水底海底は50mのポイント
水温26℃
気温20℃〜25℃の範囲
水質透明度10m程度
状況練習内容(種目等)コンスタント
事故発生タイミングターゲット時
前日の睡眠時間7時間
普段の平均睡眠時間7時間
事故前の心境問題なし
事故前の体調問題なし
個人普段の食生活問題なし
定期トレーニング
酒・たばこタバコ吸わず、お酒はほとんど飲まず。
体格・性格等体格は良い。性格は普段はおだやか。
本人見解

事故までの経緯、練習内容の詳細、自分なりに考えた原因と反省点および今後の課題等

ターゲット前の練習で3本潜水を行った。

1本目コンスタントで15m申告に対して、潜ったところ、18m程度まで簡単に潜水ができた。自分でも18mまで潜った自覚がなく、もっと浅い深度ではないか、ダイコンのエラーではないかと考えて、残り2本は、20m前後のコンスタント、さらにフリーマージョン10mでダイコンの値を確認した。ダイコンの問題ではないことを確認した。

ターゲットが開始され、6番目が私の順番だった。

オフィシャルトップとともに潜水開始した。先週の失敗が潜水開始直後の耳抜き不足だったことから、今回は、潜水直後から耳抜きを意識しながら潜った。しばらくすると体の変化(喉がしぼむような感覚)が発生した。深度20〜30mにいると判断。下を見るとプレートが見えてきた。5〜7mぐらいだったかと思う。そのまま潜行した。プレートの1〜2mのところで耳が痛くなり、これ以上の潜水は鼓膜異常の危険となると判断し、引き返すことにした。あとで考えたが、プレートが見えてからも耳抜きを注意深く行っていれば、タグを取ることができたと考える。

引き返す(浮上する)途中で、カウンターバランスの反対側にあるウェイトが見えてきた。自分のターゲット深度が33mであることから、反対側のウェイトの位置は約15m程度になる。瞬間的に深度を判断した。「まだ15m(浮上しただけ)」、「まだ15m(残っているのか)」と思った。思った以上に時間がかかっている(浮上速度が遅い)。ブラックアウトのことが頭をよぎったが、自分がこのターゲットでブラックアウトになることではなく、単に「ブラックアウト」というものである。また、フルパワーで浮上していないと感じた。なぜかフルパワーで浮上する気力が湧いてこなかった。考えられる理由は、疲れていたか、この速度でも十分、あるいは両方を直感的に感じていたからだと思う。ブラックアウトはできないと意識したのを覚えている。海面近くに来ても、呼吸に対する不安は無かった。そのまま、海面に浮上した。

  1. 海面に浮上して、一呼吸した。
  2. 目を閉じた。
  3. 脱力して力を抜き、呼吸に集中した。
  4. マスクを脱ぎ、力強く「アイムOK」を出した。
  5. 後ろで誰かが何かしていると気づいた。
以上が海面での、私が記憶している動作と順番である。

これを後に他の人から聞くと、
船上で観察していた人

  1. 普段の練習で、私は比較的潜降・浮上の速度が速いが、20日ターゲット時は、それ以上に浮上速度が速いように感じた。⇒危ないかなと感じた。
  2. 浮上して浮き輪につかまって、いつも通り呼吸をした⇒大丈夫かと思った。
  3. 次の瞬間、目を閉じて背中側に倒れこんだ。
  4. 思わず「あかん!〇〇(サポート)さん」と叫びました。
  5. ほぼ同時に〇〇さんが動いて、もうちょっとで顔面が水没しそうなところで背中を支えてくれた。
  6. ほんの1秒くらいで私は意識を回復して、OKサインからアイムオーケーまでSPを行った。

レスキューの人
  • 私がサンバをおこしていると思った(私がそのような動作をしていた)

いくつかの違いに対して考察を行った結果を記述する。

考察1. --船上の人が、私の浮上速度をいつもより速いと感じた。 私はフルパワーではなく、自分では遅いと思われる浮上速度だった。--
この違いについては、私のターゲット内容がシーズン初めから、そのときまでの間で変化したことが原因ではないかと考える。今シーズン初めは、フリーマージョンで30mの深度までトライしていた。それが終了すると、コンスタントでのトライを行っていた。このコンスタントのトライについても、練習時とターゲット時で、フィンの使い方が、バタ足でトライする、ドルフィンでトライする。というような、統一していない状況だった。ドルフィンでコンスタント、ターゲットにトライするようになってきたのは、8月になってからで、そのころに一緒に練習したのは、1回だったと思う。もし、それ以前の浮上と最近の浮上で比較すれば、以前のほうが全力でも遅く、最近のほうがパワーダウンでも早い可能性がある。 浮上中に呼吸が危なくなって、いつもより速い浮上、というのは、私には無かったことである。

考察2. <重要-ここがBOかBOでないか、判断するポイントです。>
--船上の人が、私が後ろに倒れこみ、「あかん、〇〇さん」、と叫んだ。
私には、うしろに倒れこんだ明確な意識なし、後から考えて、体が後ろに動いていたかなという、はっきりしない思いはあるが、怪しい意識である。「あかん、〇〇さん」は聞いていない
ここが一番重要なポイントと考える。
後ろに倒れたこと(倒れたという表現はBOの表現だが、体を後ろにそらしたとすれば、BOでは無くなる。以下に述べる)を記憶しているならば、叫び声を記憶しているならば、意識があったとはっきり言えるのだが、残念ながら、どちらもない。しかしBO以外で意識していなかったとも推測できる。この状況の前の私の意識に戻ると、私は、海面に浮上して呼吸をして、目を閉じ、また呼吸を始めた。この目を閉じたのはBOでないと言い切れる。呼吸を整える一つとして、目を閉じ呼吸に集中しようとした。この後の脱力も記憶しており、どちらも意図的に行った。この後に私が後ろに倒れたことになるが、

  1. 私は呼吸している感覚は覚えている。このことから、後ろに倒れそうになったのは、(深)呼吸をしようとした動作とも考える。海面でフロートに腕でつかまり、深呼吸をすれば、上体(頭)が後ろに反ることになると思う。
  2. フロートにつかまった時、少し前かがみになった記憶がある。次の動作を行うために体を伸ばす(反る)体制になってしまった。
  3. BOとまではいかない状況だったこと。うつらうつらしていて、はっと目が覚めるということがある。「アイムOK」という瞬間が、はっと目が覚めた瞬間の動作に似ていたことは覚えている。この場合、呼吸をしている感覚があって、次の動作なので、意識に完全な空白があったとは考えていない。
叫び声を聞いていないのは、呼吸に集中していたため、聞こえなかったと推測が可能。
上記にも述べているが、私はフロートにつかまり呼吸をして目を閉じた時、若干前のめり気味になって呼吸に集中したと覚えている。このあと後ろに倒れて顔が海面につく間際までいき、1秒後に意識を回復したのなら、相当な動きになったと思う。アイムOKをしたとき、上体は立った状態だったと思う。サポートが海面に背中をつけた私の上体を、立てなおしたという行為があったのかどうか。下に沈んだというほうが、受け入れやすい。この瞬間が、ビデオに撮影されており、自分で見ることができれば、BOの有無を自分で判断できると考える。

考察3. --レスキューは、私がサンバの状態だったと判断した
上記に対して、私は体の震えを一切感じていない。
5月に競技会に参加して、スタティックでサンバのような震え、ダイナミック(75m)でサンバほどでない震えを自覚している。それは1分以上、30秒以上続いた。5月より今のほうが、無呼吸で潜れる時間、距離は伸びている。今回は、浮上してから、「アイムOK」をするまでは15秒は経過していないと思う。震えが15秒で消失するとは思えない。BOをして回復したとも思えない。今回31m(往復62m)のコンスタントであり、2週間前には、30m(往復60m)コンスタントを達成している。そのときも、今回も浮上時に息苦しさは感じていない。呼吸的にはサンバを引き起こすような状況には無かったと考える。

4.全体を通しての考察
今回のBO、あるいはBOと誤解される症状は、海面に浮上してからの行動のまずさが原因である。

  1. 海面に浮上して目を閉じたこと。
    これがBOと誤解される行為だったこと。次に述べるが、BOを起こしたとすれば、その一歩だったこと。
  2. 気を抜いて)脱力したこと。
    以前、スタティックでBOをした人の話では、時間のコールは、しっかり聞こえ、息苦しさを感じることなく、水面に顔をあげた。このとき気を緩めた。気がつくと仰向けになり、「〇〇さん、呼吸して」という状態だった。そしてBOしたことに気づいた。気を緩めたことがBOにつながったと言っていた。私がBOをしたのならば、この現象が起きたと考える。
  3. 呼吸以外のことにも神経を研ぎ澄まさなければいけない考えがなかったこと
    呼吸以外にも注意していれば、意識がある限り、体を反らしたかどうか、レスキューが体を支えたことを認識できたはず。またBOは起こらないものと考える。
以上のことより、潜水・浮上における問題よりも、浮上後の問題である。過去にも浮上後の行動で誤解されるようなものがあったことには気づいている。今後は、浮上後の対処、SPを確実に誤解されることのないように行うものとする。

サポート見解

事故までの経緯、徴候、事故後の対処、そのた他気づいた点等

私自身の潜水後にサポートに入りました。カウンターバランスでのサポートは初めてだったため少々緊張していましたが、できるだろうと思いました。

本人が潜水しはじめた後に、ラインをつかんでサポートダイブの為に呼吸を始めました。彼が見えなくなってから10〜20秒後に潜水を開始しました。8メートルをちょうどすぎた頃、彼と水中で会いました。彼に追いつく為に非常に早く浮上をしました。

ボートの真下に浮上しないように、水面下2メートルくらいのところで素早く方向転換をしました。そのために本人の横ではなく、後ろに浮上することになりました。

よりよいサポートをする為の場所を探す前に、本人が呼吸を開始するのを待ちました。彼が呼吸をしている最中にうなり声をあげたのが聞こえ、後ろに倒れ始めました。ロープをつかんで体重を支えきれなかったように見えました。すぐにサポートをするために移動しました。

彼の手がロープを離れ、後ろに倒れていくところで、頭を支えました。彼の口が水の中に入るところでした。私はロープに捕まり、彼の頭を私の肩にのせて水の上に出るようにしました。この間彼は私のサポートにあらがうこともなく、何も言いませんでした。無反応だったと思います。

この間ほんの数秒(4〜5秒)だったと思います。その後彼はすぐにロープをつかんで自分を支えることができました。

その時本人は「自分は大丈夫である」と言う意味のことを言いました(はっきりなんと言ったかは覚えていません)。自分に何が起こったかは気づいていないように見えました。これを見た人たちに言われて、彼はようやくボートにあがって休憩することを了解しました。

本人が完全なブラックアウトをしたとは言い切れませんが、彼が一時的に無反応で危険な状態にあったことは間違いないと思います。また、彼をサポートして頭を支えたこと、そして、ボートでの休憩を促したことは正しかったと思います。

補足

今回の件は、本人はBOの意識が全くありませんが、典型的なBOの症状と兆候です。
本人のレポートからも、典型的なBOと言えるでしょう。
上記レポートの本人見解は、あくまでBO直後の感想であり、その後代表・副代表との話の中で これがBOであったこと、今後注意すべき点について納得してもらっています。