LMC・BO体験レポート

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レポート

種別BO or LMCBO
環境日時2010年12月4日16時16分頃
場所プール(25m×17m(8コース)×1.4m)
水温27℃
気温、室温室温 25℃
水質透明度25m以上
状況練習内容(種目等)ダイナミック ウィズアウトフィン
事故発生タイミング浮上直後
前日の睡眠時間5時間
普段の平均睡眠時間6時間
事故前の心境リラックスしていたと思います
事故前の体調2種目を終え、疲労感、眠気がありました
個人普段の食生活3食ともよく食べます。間食(お菓子等)も1日1回程度します
定期トレーニング筋力トレーニング:フリーハンド(ウエイト無し)、3日に1回
スイムトレーニング:25mプールで2000m程度、周4日程度
酒・たばこ飲酒2ヶ月に1回程度、喫煙:無し
体格・性格等体格:身長170cm,体重66kg
性格:マイペース、大ざっぱ、いきあたりばったり
本人見解

事故までの経緯、練習内容の詳細、自分なりに考えた原因と反省点および今後の課題等

<状況>
  1. インドア大会に選手として参加しました。
  2. 大会期間1日間、種目はスタティック、DYN及びDNFの3種目でした。
  3. OT時刻はそれぞれ11:36、13:45、16:14でした。
  4. スタティックアップはOT30分前に入水し10分間シュノーケルで浮いた後2分閉息を1本行いました。
  5. スタティック結果は5分25秒ホワイト(申告3分)でした。
  6. DYNアップはOT40分前に入水し200m泳いだ後モノフィンで25m×2本潜りました。
  7. DYN結果は150mホワイト(申告50m)でした。
  8. DNFアップはOT35分前に入水し25m×2本潜りました。
  9. DNFアップの際、左足裏がつりました。ストレッチして回復しました。
  10. DNFはOT後、6秒程度で潜水を開始しました。
  11. 100mターンの際、腕を体側につけたグライド姿勢のまま頭をプールの壁にぶつけました。
  12. 139mで浮上しその後BOしました。(詳細な状況は覚えていないため不明)
<身体・心理的状況>
  1. 前日の睡眠はいつもより浅く、起床まで2、3回目が覚めました。
  2. 当日の朝はいつもより、若干の眠気とけだるさがありました。
  3. 朝食はWiderゼリー1袋と、プロテイン20gを水に溶かして飲みました。
  4. 会場の最寄り駅に着いて、あまりに空腹なのでチョコレートを買って食べました。
  5. 開会式後、飲食はWiderゼリーと水を少しずつ摂っていました。
  6. スタティックは緊張しましたが、SP等、特に問題なく終えることができたと思っていました。
  7. スタティック結果は自己ベストであり、順位も思ったより上位でモチベーションは上がりました。
  8. スタティック後は思ったより疲労感があり、安静・ストレッチに努めました。
  9. DYNは100mを超えて苦しさを感じながらも150mまで行ってやろうと思って泳いでいました。
  10. DYN浮上直後、体がガクッとなり視界が少し暗くなるのを感じました。
  11. DYNの後、チーム員に「ちょっとやばかった」と言われ、LMCに近い状況だったと思いました。
  12. DYN結果は自己ベストであり、疲労感を感じつつもあと1種目頑張ろうと思いました。
  13. DYN後は、観戦しながら、合間に横になったりストレッチしたりしていました。
  14. 若干の眠気があり、観戦の合間に横になりましたが、睡眠はとっていません。
  15. DYN競技が終わり、自分とトップ選手とで、思ったより差が開かないなと思いました。
  16. DNFの結果次第では、上位に入れるかも、と思っていました。
  17. DNFアップで足がつったときは、疲労してるな、と思いました。
  18. DYNでのニアLMCや、上記足がつったことにより、無理はしないでおこうと思っていました。
  19. 同時に、最低100mできれば自己ベストタイ125m行きたいなという気持ちも混在していました。
  20. カウントダウン前、眠気や疲労感によりかえってリラックスできているのでは、と思っていました。
  21. カウントダウン、OT、潜水開始まで特に問題なく進んだと思っていました。
  22. 練習の時と同様に、50m手前で苦しさを感じ始めました。
  23. 75mターンをした後90m付近で、もっと力を抜いて心を静めよう、と思いました。
  24. 100mターンの際、腕を体側につけたグライド姿勢のまま、プールの壁に頭をぶつけました。
  25. 「なんで?」と動揺しつつも、「あわてる事はない、まだいける」と思ってターンしました。
  26. 100mターン後も、もっと力を抜いて心を静めよう、と思いました。
  27. 同時に、125mで浮上しようと思っていました。
  28. その後のことはよく覚えていません。
  29. 気が付くとセキュリティの方々に体を支えられ仰向けになっており、すぐにBOしたと思いました。
  30. 意識回復した直後は、100mターンの後にBOしたと思っていました。
  31. 着替え等を済ませて落ち着くと、どこが間違っていたのか、という疑問で頭がいっぱいになりました。
<考察>

 通常の練習と異なっていた点を列挙し、それぞれについて考察し、対策を検討します。

相違点(1):競技であったこと
  • 考察:大会に参加する以上、順位や結果を意識するうえ、今回の大会では、途中から (DYN終了後)意識しだしたことが、大きな心理変化があったと思われます。 但し、初参加であったため、具体的な心理変化を把握しきれていません。
  • 対策:今後も大会へ参加し、心理変化を把握し、慣れが必要だと思います。練習でも、 例えば、ターゲット結果が大会ではどの程度の順位になりそうか、等を意識する ことで競技を意識して練習に取り組みます。
相違点(2):緊張感(集中力)の高いターゲットを1日に3本行ったこと。
  • 考察:練習では、ターゲットを複数本行うときは、徐々に集中力を高めて距離を伸ばす等、 強弱をつけて行っていますが、今回のように自己ベストを狙ったターゲットを3本連続 行ったことは無いため、連続による影響を把握してませんでした。
  • 対策:練習におけるターゲットのやり方を検討します。例えば、1本目をMAXで行くと2本目 はどういう状態になるのか把握したり、1本目を今までよりも集中力を高めて行う、など。
相違点(3):摂食制限が長時間であったこと。
  • 考察:練習でも摂食制限は行いますが、今回のようにほぼ終日制限したことはありません。 但し、今回の摂食制限状態でも、低血糖症状は無かったので低血糖状態には至っ ていないと推察されます。
  • 対策:練習会参加の際にいろいろ試してみる必要がありますが、それほど頻繁に参加でき ませんので、同時に、他の方がどうしているのか、情報収集を行います。
相違点(4):朝から疲労感があり、さらにDNF前には、足がつり、眠気を伴うほど疲労していたこと。
  • 考察:(2)で述べましたように、緊張感の高いターゲットの連続により、予想より疲労していまし たが、その対処が行われず、さらには疲労により、集中力が欠落し、かつリラックスして いる状態であったと思います。そのような状態でありながら、普段と同等のパフォーマ ンスを期待していました。
  • 対策:大会では極度に疲労する事を認識し、大会参加前及び参加中の疲労回復に努めます。 また、練習において、練習前の身体的状況と、それに対する潜水中の身体的状況の把握 に努め、身体状況に対する感性を高めていきます。今まで練習では、何m潜れたか、という 結果の事しか考えていなかったと思います。 また、ヨガや禅等による、集中力を高めつつ、心を無にする方法の習得にも努めます。
相違点(5):DNF潜水中、100mターンの時にプールの壁で頭をぶつけたこと。
  • 考察:普段は、プール底の進行方向のラインが無くなると、間もなく壁に着く、との判断により ターンしています。ラインが無くなるかどうかを見間違える、というのは一般的に考え難 いため、このときはターン前に意識障害が発生していたのではないかと推察されます。 従って、この出来事は潜水を中止せねばならないトラブルである、と十分に判断し得る はずであり、100mで潜水を中止すべきでした。
  • 対策:ハプニングの程度と潜水続行の可否については、経験不足により判断が難しい場合も あると思いますが、(4)で述べましたように、練習への取り組み方を改善し、結果以外の 評価(身体的状況の評価、ハプニング及びその対処の評価)を行って、フリーダイビング に対する感性を高めていきます。
<最後に>

セキュリティーの方々をはじめ、大会スタッフの皆様にご迷惑をおかけしました事をお詫び申し上げます。
また、無事にレスキューして頂いた事に感謝申し上げます。今後フリーダイビングを行っていくうえで、本当に良い経験になったと思います。
この経験を今後に生かしていくことで、皆様へのお詫び及び恩返しとさせて頂きます。
今後とも、よろしくお願い致します。

サポート見解

事故までの経緯、徴候、事故後の対処、そのた他気づいた点等

<メインセキュリティの見解>
  • 入水
    入水してからOTまで落ち着いてるよう見えました。特に問題なかったと思います。
  • 0-50m
    特に問題なし、綺麗なフォームで進んでいく姿を覚えてます。
  • 50-75m
    60m付近でストリームラインがやや振れ出したの覚えてます。
    バランスをとろうとしてるように見えたので少し違和感を感じました。
  • 75-100m
    先ほどより体の振れが大きくなり、やや苦しそうにも見えました。
    90m付近でスピードが急にゆっくりとなって、100mで頭部を衝突後、
    慌てるようにターンをしていました。
  • 100-125m
    108m付近で、ストリームラインが崩れ気味でややお尻上がるフォームになってました。
    意識が薄れてるように見受けられたので、BOするかも?と感じたのを覚えてます。
  • 125-139m
    130m付近で体を痙攣させ、一回息を吐きました。しばらくして手足が止まり、
    徐々に水面に向かい浮上。痙攣が激しくなり、二回目息を吐きながら浮上。
    SPをしようとしてましたが、出来ずそのまま倒れました。
  • BO
    歯を食いしばり、体を痙攣させてました。意識ははっきりせず、呼びかけにもしばらく
    応じれない状態でした。
  • 反省点
    1. ノーズクリップとゴーグルを外すのが遅れたこと。
      重度のBOを初めて見て慌ててしまい、一瞬ですがどうすれば良いのか?わからなくなりました。
      迷ったことがノーズクリップとゴーグルを外すことを遅らせた原因だと思います。
      すぐに外してあげれば、意識の回復も早まったと思いますから、今でも悔いが残ってます。
    2. 気道確保が十分でなかったこと。
      ご指摘頂いたように、気道確保が高めになっていました。BO後、体制を崩したM10A選手を
      チンプルで保持し、口元を水面から離そうと持ち上げ過ぎたのが原因です。がっちり保持
      しつつ、水に浮かせるようにするべきでした。
    3. サブセキュリティへ指示が不十分だったこと。
      私がメインでありながら、サブセキュリティへの指示まで気がいかず疎かなってました。
      もう少し足を下げてくれ!とか腰を上げてくれ!とか指示することで、もっと楽に選手を
      支えれていたのではないかと思います。

<隣のコースのセキュリティの見解>

2種目が終わった時点で、M10Aさんは十分優勝を狙える位置に居た。しかも最終種目は 得意としているDNFだったので、頑張って欲しいと言う気持ちで隣のコースでしたが気に なっていました。自分のコースの選手がSPを終えた時点でふと隣のコースを見るとM10Aさ んが125mのターンに入る頃でした。泳ぎは何時もの様に綺麗なホームで泳いでいたと思 います。自分のコースの選手にホワイトカードが出たので、直に隣のコースに目を移すと、 ちょうどM10Aさんが浮上した位でしたが、上がった瞬間に「アカン」と思いました。立ち上 がった様ですが身体を制御できずに、そのまま再度水没していました。担当セキュリティが 抱きあげてくれましたが私も直に駆けつけて身体を支えてあげました。かなり体に力が入 って、歯を食いしばって いる状態が少し長かった様に思います。ネックウエイトを外してあ げて、徐々に正気を取り戻して居ましたが、正常な意識の回復までちょっと長いBOだった と思います。BOの程度からすると重かったと思います。


<水中カメラ撮影担当(非専任)の見解>
  • 「100mのターンでぶつかった」というのは私は見ていませんが、125mのターンに失敗 しているのは見ました。壁に気づかずに両手をぶつけていました。頭をぶつけるほど ではなかったと思います。
  • その後、意外と冷静に泳ぎ続けているように見えました。(あくまで、カメラをメインで 見ていたので、シャッターをきった瞬間の状況だけでの判断ですが)
  • しばらくして斜めに浮上を開始していましたが、意識が混濁していたのか、コース ロープに向かってではなく、プールサイドに向かって浮上していきました。
  • その結果、頭が水面に出るより前に、コースロープに頭をぶつけて、すぐに浮上 できないでいました。
  • 自力で水面に浮上してはいましたが、その後はサンバによりすぐに水没していた と思います。(このあたりは、はっきりと見れていないので、ちょっとあいまいです)
  • 水中セキュリティの誰か?が、中さんを呼びましたが、競技に集中できていなかった のか、反応が鈍かったようでした。

<4コース隔てたコースのセキュリティの見解>
  • Bコースセキュリティ視点からの情報をお伝えします。といっても、Bコース選手に集中 していたため、あまり詳しくは見ていません。Bコース選手が110mで浮上。セキュリティ として選手の動作に集中していました。無事ホワイトカードが示され、ちょうど拍手を 送っている頃に、Dコースが騒がしくなりました。そちらを見ると、Dコース選手がサポート に水面仰向けに支えられる瞬間でした。Dコース選手は、泳ぐように手で空を二回掻き、 支える側は大変そうでした。
  • テレビカメラがのぞき込むように選手を撮影していたので、「今はレスキューや酸素を優先 するべきなのに、邪魔にならないか?」と、少し気になりました。
  • 手が足りているかどうかという目で見ると、水中に三人ついており、プールサイドにも体格 の良い人が見えたので、手は足りていると判断しました。
  • もう一人のBコースセキュリティと、「Dコースは○○さんですよね」というような確認の会話 をしているうちに、Dコース選手は意識を取り戻しました。
  • 気を取り直し、Bコース選手がしっかりした動作で水からあがるのを見届けてから、改めて 手薄になっている所がないか、プール全体を見渡しました。Cコース選手には問題無く、 水中カメラ担当も落ち着いていました。
  • Dコース選手は酸素を吸いながらも元気そうに会話していたため、危険な状況は去った と判断し、プールから上がりました。