LMC・BO体験レポート

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レポート

種別BO or LMCBO
環境日時2011年3月27日17時00分頃
場所プール(25m×35m(14コース)×1.3m)
水温28℃
気温、室温室温 26℃くらい
水質透明度25m以上
状況練習内容(種目等)ダイナミック
事故発生タイミング練習中盤
前日の睡眠時間8時間
普段の平均睡眠時間6時間
事故前の心境リラックスしていたが、記録を伸ばしたいという意気込みがあった。
事故前の体調前日より風邪気味で疲れもあった。
個人普段の食生活1日3食必ず食べます。
定期トレーニング週1〜2 ランニング30分程度、平日週1で水泳(500〜1000m程度)、週末はチーム練習orフィンスイミング練習or山でランニング
酒・たばこ酒はほぼ毎日嗜む程度(ビールコップ1、2杯)、喫煙は無し
体格・性格等176cm 62kg(かなり痩せ型)、性格はやや楽観的だが、思い込みの激しい一面もあり
本人見解

事故までの経緯、練習内容の詳細、自分なりに考えた原因と反省点および今後の課題等

<概要>

ダイナミックウィズフィンのターゲットで、申告の75mを大幅に超えて100mの壁まで泳ぎきった後、LMCに陥った。

<事故までの経緯>

チーム練習への参加はこの時点で4回目になります。(初参加は2月末)
前回までの練習においては、勝手がわからないこともあり、ターゲットは自分の限界 のある程度手前で抑えておこうという気持ちが働いていました。

しかし事故当日は、そろそろ限界付近へトライしたいとの思いがあり、少し無理をし てでも記録を伸ばすことを意識していました。

直前のスタティックターゲットでは、初の5分超えとなる自己ベストを記録。

ただ、あまり調子の良さは感じず、早い時点から苦しさを感じながも、かなり耐えて 記録更新したという状態でした。(SPで声が震えているのが自覚できました) スタティックの後、腰〜大腿部の筋肉を中心に全身に疲労感を覚えましたが、続くダ イナミックのターゲットでもこの調子で記録を更新したいという気持ちが生じていました。

<詳細>

申告は75m。これは前回までの練習と同じ数値で、少し余裕を持った距離になります。 ただし、気持ちとしては75mの時点で余裕があればターンして行ける所まで行こうと 考えていました。

泳ぎ始めてまず、フィンワークにぎこちなさを感じる。この時点で、あまり調子は 良くないと感じていました。

50mを過ぎたあたりから大腿部の筋肉にかなりのだるさを感じる。 そして申告の75m。まだ余裕があると判断し、当初の思惑どおりターン。そのまま泳 ぎ続け、プールの中間地点まで来たところで、かなり苦しさを感じたものの、「あ と少し、100mまで行けるかも」という気持ちが生じる。

残り10mを切ったあたりで、浮上のし易さを考え、深度を少しずつ上げていく。 そして100mの壁にタッチ。このとき、浮上にあたっては競技規則に則った形で浮上 しないといけないことが頭をよぎる。 (すなわち、気道が水面に出る前にプールのサイドウォールを手で掻いたり、コース の縁をつかんだりしてはいけない)

ふと、どうやって水面に出ればよいのか分からなくなり、慌ててなんとかもがいて 水面に顔を出す。

その後、コースの縁を掴もうと思うがうまく掴めない。立ち上がろうとするも、モノ フィンを履いた状態で立つ際の基本動作(フィンを返して踵側から足をつく)ができ ず、よろけた格好になったとき、後ろからサポートの方に抱えて頂いた。

この間、意識を喪失したとの自覚はありませんが、自分で立ち上がることが困難だった ため、BOに近い状態だったのではないかと考えます。

<原因(自己分析)>
  • 申告値を大幅に超え、明らかに過大な距離を泳いでしまった。これはまた、サ ポートの方を困惑させ、事故のリスクをより高めることに繋がったと思います。
  • 体調があまり良くないとの自覚があったにも関わらず、自己の限界まで追い込 むようなトライをしてしまった。
  • 壁にタッチしてから浮上する際、普段の練習ではコースの縁を掴んでからガバ ッと水面に顔を出す動作を無造作に繰り返していた。そのため、ターゲット形 式においての、壁際での浮上を意識した練習が出来ておらず、限界時に咄嗟の 動作ができなかったと考えます。
  • 直前にスタティックで自己記録を出し、かなり追い込んだ感覚が体に残ってい た。そのため、ダイナミックの際も、「同じくらいの苦しさ」を目安にしてし まい、限界の見極めを誤った。
<反省点・今後の課題>
  • まず、練習会における申告の意味について、「行けるなら、申告を超えて行け る所まで行ってもいい」との思い込みがありました。 これは重大な思い違いです。事前の予告と違う動作をすればするほど、サポー トの方の負担が増し、事故のリスクが高まるという当たり前の結果を軽視して いました。深く反省いたします。今後は、申告の意義を重視し、バディやサポ ートの方とのコミュニケーションを十分にとることを心がけます。
  • 風邪気味で体調があまり良くなかったにも関わらず、バディ確認書にその旨を 正直に報告しませんでした。これもまた、重大な反省点です。バディ確認書は、 バディの体調を認識することのみならず、それに記入することによって、自分 自身の体調を客観的に評価するという役割もあると思います。安全を確保する ために必要な作業を軽視することは、あってはならないことです。その点は深 く肝に銘じたいと思います。
  • 上の原因分析で述べたとおり、ターゲット時の浮上の方法について、スキル不 足の一面もあったと思います。あらゆる状況において、安全・確実に浮上する ためのテクニックを、徹底的に体に覚えこませる必要があると思います。
  • 直前のスタティックで限界までトライしたことについて、体に残るダメージの 影響を認識していませんでした。これは事前の不勉強によるものです。
  • 今回は明らかに記録更新を焦る気持ちが先に立っていました。スタティックで 思いの他、良い結果が出せたため、一足飛びに記録更新できるかのような慢心 があったことは否定できません。日々の積み重ね無しに大幅な記録更新などあ りえないということを、謙虚に受け止めたいと思います。
サポート見解

事故までの経緯、徴候、事故後の対処、そのた他気づいた点等

<サポート視点の経緯>

  • この日はSTA2本目にて5分を越えるベスト記録を出し、その際、見た目にもかなり限界に 近かった。STA終了時に、「かなり限界に近かったですね」という確認の会話を交わし、 選手も自覚はあった様子。
  • DYNのフォームは、75mターンまでは、見ていて特に問題は感じなかった。
  • 私はスタートライン側(25mプールの0〜12.5mの範囲)のセキュリティを担当していたが、 申告が75mであったため、75mターン付近でいつ選手が浮上しても良いように、フルコース 体制として近寄っていた。
  • 選手が75mの壁を蹴ってターンした後は、選手がいつ浮上してもサポートできるようにと、 選手の後ろをついて行くのではなく、モノフィンの右横付近の位置を保って泳いだ。
  • 選手は90mくらいから速度を上げ、徐々に深度を浅くしていったが、フィンワークはしっかり しており、足が水面から出ないよう、水深もコントロールできていた。
  • およそ95mで選手は顔を上げて100mの壁を見た。私も100mの壁を見てつい頑張りすぎ、 BOした経験があるため、「危ない」と判断し、全力でスパートした。
  • 予想通り選手は100mの壁にタッチと同時に顔を水面に出したが、体の自由があまり 利いておらず、モノフィンのつま先を前に出せていなかった。選手はプールの縁を掴めず、 身体を反らしながら左前に倒れていった。気道が水に付くか付かないか位のタイミングで、 ようやく背後から追いついて右脇の下に手を入れ、背筋で無理やり選手の顔を持ち上げた。
  • 仰向けにしようと思い、選手の脚を膝で蹴ってモノフィンを前に出すと、選手は意外なほど しっかりと自分で立とうとしたため、あえて仰向けにせず、コースロープに背中からもたれる 姿勢に立たせ、倒れないように両手で身体を保持するに留めた。
  • この時、選手の目の焦点は合っていなかった。同時に、選手の呼吸がつっかえ気味に 見えた為、「呼吸!呼吸!しっかり呼吸!」と呼びかけた。
  • 呼吸・意識はすぐに回復し、特に記憶の欠落や頭痛なども無いようだった。
<サポートとしての問題点と今後の改善点>

サポート及び、練習リーダーとしての問題点は、下記3点。

  1. STAでLMC寸前だったことで、苦しさに対して我慢強くなっていた事が原因の一つと 思われる。もう少し、セーブするように会話していても良かったと思う。また、この様な事例が 一般的な知見として蓄積できれば、今後はLMC/BOの予見に大いに役立つと思われる。
  2. サポートとしては、我ながら選手の様子を見ながら対処できた方だったと思うが、 選手を持ち上げる動作や、選手を仰向けにしようとする動作は、やや荒っぽすぎたと 反省する点があった。レスキュー練習の回数を重ねることで、抑制の効いた動きを 身に着けたい。
  3. この日、練習人数は4人だったが、一人がお手洗いに行っている間に、このDYN ターゲットを行なってしまっていた。トラブルに備える意味で、全員がそろって注目して いる中で、ターゲットを行なうべきだという点も、この日の練習リーダーとしての反省点。